薪火焼きの年輪★ガトー・ア・ラ・ブローシュ 

2009/05/01
 八ヶ岳のログハウスで薪ストーブにあたりながら、ずっと夢見ていたことがあった。パチパチ鳴るこの炎で、フランスで見たガトー・ア・ラ・ブローシュが焼けないかなぁ…。でも一人では道具造りからして煮詰まってしまって。

 その夢が、先日のテレビ番組をきっかけにトントン拍子に進んでしまって、薪ストーブどころか、お外のBBQ場で、プロのフランス菓子パティシエさん達と一緒に大きくやることに!! 最初は軽い気持ちだったのが、参加人数も増え、シェフと打ち合わせをしていくうちにただ事ではなくなってきて…それこそ前日はドキドキしてなかなか寝つけなかった。


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 そもそもガトー・ア・ラ・ブローシュとは? 

 フランス・ピレネー地方に伝わるツリー型のバウムクーヘンで、ガトー・ピレネーとも呼ばれる。6年前、雑誌の旅行記事で、民宿のマダムが暖炉で焼いたものが朝食に出るというのを読んでから、炎の前のそのシーンを体感したく、翌2004年ピレネー行きを決行。しかし、炎のガトー民宿はあいにくの満室、ネットで探した第二候補もシーズンオフでクローズとついてない。そして目が赤くなるほどの思いで見つけた…feu des bois(薪火で焼いた)の文字と住所と電話番号、それだけのインフォメーションを頼りにあたった農家でついにOuiの返事がもらえた。やった!三度目の正直だ(今は検索でたくさんヒットしますが、当時はなかなか…)。私は観光名所でもなんでもないその村へ、ただただ炎のガトー見たさ、食べたさのため車を走らせた。菓子には特に興味もない友人を巻きこんで。

 これがそのときの写真。こちらの農家は販売をしているので、暖炉というよりガトー・ア・ラ・ブローシュを焼くための炉で、作業性を考えた高さがある。芯になる大・中・小のコーン(円錐)型を心棒に取りつけたら、パラフィン紙をくるりと巻き炉の前で少し間温める。そして生地をレードルで素早く上面にたらしたら、モーターのスイッチを入れる。熱が逃げないように、ガトーに熱が集中してあたるように上部の鉄板をおろしクルクルクル…想像より速いスピードで回転させ遠心力の力でコーン型にまんべんなく生地が貼りつき、薪火で熱が入っていく。程よく色付き、生地が焼けたところで次の生地を流し、下に垂れた生地も時々すくって再びかけつつ、まわすことを繰り返す。速くまわす事で滴りの角ができてくる。作業は生地のことばかりでなく、時々薪(ここは農家なのでとうもろこしの芯も!)を足しては火力調節も行う。焼き上がりまで大きさにより1〜2時間、適当にやっているように見えるけれど、炎の前で、五感をフルに働かせるのは相当しんどそう〜。
 焼きあがったガトー・ア・ラ・ブローシュは、物腰竿のようなラックに櫛ごとかけられ、熱がとれたところでコーン型から抜きだし、パウダーシュガーで雪化粧して完成。こうやって並んでいると雪の積もった樅の木の森みたい。お土産に小さいの二つ買おうとしたら、(見ていたら欲しくなってしまった友人と)ひとつずつだけならといわれた。こんな作業だと1日に何個も出来ないから、予約でいっぱいのところを分けてくれたのかもしれない。

 確かガトー・ア・ラ・ブローシュは、工場製のものをお土産屋さんでは見かけたけれど、町のパティスリーでは見た記憶がない。同じ年輪菓子でも、ドイツのバウムクーヘンのようにマイスターの菓子屋が看板商品に掲げているのとは育ちが違うなと感じた。それにドイツならあちこちの都市で見たけれど、フランスでは今のところピレネー周辺だけ(パリにもない)。このガトーは立派なオーブンのある菓子屋ではなく、暖炉のある家々で焼かれたのがはじまりだからかな。こちらでは昔から結婚式など、お祝いのときにいただくお菓子だそう。レシピは?と聞くと、セクレ(秘密よ)!とマダム職人。各家庭で工夫を凝らした味は大事に受け継がれているのだろう。

 大事に抱えて帰国してから、みんなで食べたガトー・ア・ラ・ブローシュは、レモンとバターの風味に、サックリ薪火の香ばしさが巻きこまれた味わい深いものだった。

 その記憶を元に、ガトー・ア・ラ・ブローシュを焼く会は実行されることとなった。(その模様は次回に! 思いが強いとなかなか書けないので気長に…)
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