レコールバンタン

今度は納豆でデザートを??? 〜世界料理サミットでカルチャーショック〜 

2009/02/13
 いやいや〜、ものすごいものを見てしまって、聞いてしまって、3日以上経つのに今だ考えさせられる余韻ったら…。最も予約の取れないレストラン、「エル・ブリ」のフェラン・アドリア氏やジョエル・ロブション氏など、名だたるシェフが舞台でその料理(哲学)を披露する世界料理サミット。入場料は1日券2万円だったか…とにかく高いし素人には何のこっちゃな内容予告で私には関係ないはずだった。ところがひょんなことから招待券が当たってしまい(うれしい♪)、恐れ多くも1日どっぶり、その世界に浸りに行った。

 どれくらいの人が入れる会場だろう? とてつもなく大きな画面をバックに、デモンストレーションキッチンが設置された舞台。観客は同時通訳のイヤフォンを頼りにその画面やシェフの話、動作に見入る。私は隣の展示会場で腹ごなししてから、12時からの、(今注目の若手)フランス人シェフ4人、2年前予約が取れなかったスペインバスクの三ツ星「アルザック」のファン・マリ・アルザック氏、「エル・ブリ」のフェラン・アドリア氏、青山の「レ・クレアシオン・ド・ナリサワ」の成澤氏、ジョエル・ロブション氏、銀座「ロオジェ」のメナール氏、最後は分子化学のティス教授と、がんばった。が、あまりに密度の濃い内容に集中力は限界、そこに最後の分子化学のお話は難しすぎて〜頭ふらふら…。

 そのデモやプレゼンで共通してみられたのが、真空調理または低温調理、日本の素材を取り入れたメニュー(とくにワサビが目立った…やはり昨秋ヨーロッパで感じたことと同じ!?)。

 お菓子の世界なら卵の殺菌温度83〜84℃まで上げてカスタードクリームなど作るけれど、お料理の世界はそれよりずっと低いなんて! お肉は種類によるけれど中心温度55℃位の火通りがたんぱく質が固まりきらずしっとりあがるとか、サーモンはそれより低かったっけな? ほとんど透き通ったレア状態の調理だ。お刺し身やカルパッチョなんて生食もありだから問題ないのだろうけれど…こういう料理を作るには、調理技術以前に衛生管理や素材の目利きをきちんと理解せずにはやっちゃいけないのだろう〜などと素人っぽい感想をもった。

 ロブション氏は、牛乳、トマトジュース、日本酒を凍らせてから遠心分離機のような?機械でエキス分と水に分け、濃縮した液体の作り方を披露した。アイスキャンディーをチュッと吸い込んだときのような、最初の一口の濃さを想像しながらなるほどなるほど…。伝統的なフランス料理なら、液体は煮詰めてソースを作るけれど、火を入れることで香りやフレッシュ感が損なわれてしまう素材にはこんな手法があるということ。さらに真空状態なら色も鮮やかなまま。

 フェラン・アドリア氏のプレゼンは、どのようにして、何がきっかけでその料理が生まれたのか、今までの代表作を例にとって大画面を見ながらの力説。彼は日本で出会った素材やものからたくさんのヒントを得たのだと日本をとてもリスペクトしていた。例えばオブラート。透明で包めるけれど口の中で溶けてなくなる性質に着目し、フィンガーフードを考えたり、オブラートに代わるものを作り出したり、海草を食べる習慣のないスペイン人にスペインでとれる海草を使った料理を考え出したり…。そして今は納豆の糸が放つコーヒーの香の要素をデザートに使ってみたいのだとか!? うーん、ピエール・エルメにも通じる発想力。。。話しに惹き込まれプレゼンが終わる頃にはエル・ブリの料理がどうしようもなく食べたくなっていた。それは限りなく不可能であるとわかっているけれど…。
 
 実験室にあるような不思議な機械や道具を駆使して作った料理は冷たく味気ない気がしていた。でもその考えは覆されてしまった。こんな調理法が生まれたのも、分子化学も、全ては食べ手を感動させたい気持ちからだった。日本料理における素材感、儚さに影響を受けた料理人達が、現代の生活にマッチするよう脂肪を抑え、香り、フレッシュ感、色彩、テクスチャーを愛情をもって表現した形。いいサミットだった。欲をいえば、香りや味がちょっとでも体感できたらなぁと。

 帰り道、ビゴの店のワサビ入りクロワッサンを齧りながら(これはいける! ワサビはハーブだものね、ビゴさんはワサビ使いはうちが一番先やと自慢♪銀座店のみの製造販売だそう)、パティスリーの前衛ってどうなっているのだろう、と考えた。ふと、大御所オーボンヴュータンの河田シェフがコンフィズリーの本の中で、イタリア製の真空調理器を愛用しているのを思い出した。保存食としての糖度はきちんと上げつつ、色鮮やかさとフレッシュな果実の香りを逃さないコンフィチュールを作るには最適なのだそう。伝統を踏まえた方だからこそ、たどり着いたやり方なのだろう。うーん、さすがだぁ。
  
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