レコールバンタン

コロンビアのパンとコーヒー 

2008/07/25
 7月20日、私の足はたまプラーザではなく、日比谷公園に向かっていた。目的はコロンビア独立記念日を祝してのお祭。大使館の案内サイトのお料理メニューに、un tamal con chocolate,(チョコレート入りタマル)を見つけ、どうしても食べてみたくなったから!

 タマルっていうのは、バナナやとうもろこしの葉っぱにとうもろこしの粉を練った生地、肉などを詰めて蒸したちまきみたいな南米とうもろこし文化圏の食べ物。そのチョコレート入りっていうのは果たして甘いの?、それともしょっぱいスナックなの? この国にはチョコレートドリンクにチーズを入れて飲む(食べる)文化があるので、わははっ、想像がつかない。

 会場では賑やかな南米の音楽、ダンスなどのステージをバックに、雑貨や食べ物やの屋台が並ぶ。煙をたてた威勢の良い屋台をのぞいてみれば、ダイナミックな仔豚の丸焼き、チョリソ、ピロシキのような、とうもろこし粉の生地にひき肉を詰めて揚げたエンパナーダ、ドーナツのブニョエロス、グリーンバナナを潰して揚げたパタコン、その横に、葉っぱ包みのタマル発見。これがチョコレートのタマル!? 喜んだのもつかの間、内容をきくとノン、ひき肉と野菜入りの一般的なタマルだった。それどころか、タマルは作るのにすごく手間がかかるからって、作っていた屋台は2軒だけ。うーん…、残念。

 しかし、がっかりするだけじゃなかった。コロンビアのパンといわれるアレパの正体がわかったから。

 昨年の夏、五反田の南米食材ショップ「ムンドラティーノ」で買ってみたアレパリーナというホワイトコーンを蒸してから挽いた粉。袋の裏に日本語訳されたアレパの作り方を見て作り始めたはいいが、最後の‘丸く形作って焼く’に、はて?、と手がとまってしまった。見たことも食べたこともないものを作るのに、映像なし・文章だけの説明でこれじゃあアバウトすぎてわからない。大きさは? 焼くっていうのはオーブンで、フライパンで、それとも網か、炭火焼きとか? それに焼きあがりの目安は? もう、わからないことだらけ(笑)。結局お餅を焼くイメージで、網で焼いてみたのだけど、これでいいのかなんだかなぁな…味だった。

 なので屋台で白くて丸く平たい、お餅のような、おせんべいを焼く感じのアレパを見たときには思わず、身を乗りだしてしまった。

 屋台を仕切るコロンビアの肝っ玉かあちゃんをつかまえて、例によって質問攻め。アレパの作り方、食べ方などを聞いた。

 まず(乾燥した)ホワイトコーンを蒸してからミンチにかけ、こねて生地を作る。それを1cm程厚さに平たく丸めて網で炙り焼く。このお祭り用のアレパに、なんでも2日だか3日かかったのだとか。粉(アレパリーナ)からではなく、コーンから仕込んで作ったとは、そりゃ手間がかかるわけだわ。

 下ごしらえしたアレパを次々炭火焼し、焦げ目がいい感じについたら出来あがり。ここでは焼き直ししていたけれど、すぐ食べるなら焼くのは一度でいいそう。この国のプリミティヴな食べ物には、窯(オーブン)調理はなかったのかな。

 熱々に、肉やチョリソーソーセージのグリルののせて、野菜のサルサや紫玉ねぎスライス、好みで唐辛子を添えて食べる。肉汁やソースが染みこんだアレパと一緒に、または交互に食べる、このスタイルは日本なら丼もんってところかな。

 しかし単体では味付けのないアレパはやっぱり掴みどころのない食べ物。コーンの香りはあるものの、トスカーナの塩なしパンのような、素朴な味だ。同じとうもろこし粉のパンなら、メキシコのトルティーヤの方が、薄い分クリスピーでわかりやすいな。(具を巻けるし!)

 甘くしても食べるの? 彼女にまたひとつ質問すると、フライにしたりもするそう。それとチョコレート…、ととどめの質問をしようとした瞬間、かあちゃんにお呼びがかかった。とにかく昼時、屋台は忙しいのだ。ありがとう、これでコロンビアの食が少しひもとけた。
 さらにチョコレート、チョコレート…と探したがどこにもなし。そのかわり、コロンビア産コーヒー豆の屋台artemisaに立ち寄ってみた。そこは、オーガニックで上質なコーヒーを栽培することで、農家が適正な収入を得られる流通システムを行うフェアトレードの会社だった。アイスコーヒー一杯100円、この一杯がなんとソフトで和むコーヒーだったことか!

 現地の写真、流通システムを説明するグラフを前に、「コーヒーの販売の半分は焙煎業者に、また半分は輸出業者に、つまり栽培農家に支払われる分はわずか数パーセントにしかならないという今の仕組みが問題なんだよ。結果貧困により麻薬犯罪に巻きこまれるという悪循環をなんとか変えたいんだ。僕自身コーヒー農家にいたから。」そう語ってくれたAさんに、カカオ豆は栽培していないの? とたずねると、「まだはじめたばかりだからね。そのうちやるかもしれないけれど。」と笑って答えてくれた。

 とうもろこしやじゃがいも、いんげん、かぼちゃ…南米からやってきたこれらは、日本を含め、世界中の飢饉を救ってくれたばかりか、各地に根をおろし、お国自慢の料理に登場するまでとなった。けれどカカオとコーヒーは気難しく、栽培地域は限られた遠い国のまま。一杯のコーヒーのおかげで目覚め、一欠けらのチョコレートでリラックスする私にとって、支払う相手は誰なのか、考えるいい機会になった。シルクロードの時代はこんなこと、みんな考えていたのかなぁ…。
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