レコールバンタン

脱いで行くワイン 

2008/06/15
 今回は、先日行ったワイン会で興味深かったことなど…。

 メインのワインは、八ヶ岳の南麓、標高800mの地で自らぶどうを育てるBEAU PAYSAGE (ボー・ペイザージュ)岡本英史さんのシャルドネ(白ワイン)3本。この3本は畑も収穫年も同じぶどうだけれど、ワインへの仕立て方が違う。写真左から…

*BEAU PAYSAGE‘TSUGANE’Chardonnay 2006 
*BEAU PAYSAGE‘TSUGANE’Chardonnay LIB 2006
*BEAU PAYSAGE‘TSUGANE’Chardonnay LIB naked 2006

 2本目、3本目のLIBとは、Let it be(ありのままに)の略でSO2(亜硫酸→酸化防止剤)を添加していないもの。そして3本目のnakedは裸の意で、樽を使っていない、樽の香りをまとっていないもの。

 本来シャルドネという品種は、個性的な香りをもたないため、オーク樽で発酵熟成させるとオークのバニラやアーモンドのような香りがワインに移って、より深みや厚みをもたらす効果がある。人間は嗅覚でものを味わうので、その方が一般に好まれるし評価も高くなる。市販のジュースに香料が添加されているのも同じこと。それをあえてとっぱらって、ぶどうの素顔のままを表現するなんて勇気あるなぁ。引き算は足し算より難しいはず。

 さあ、コルクを開けよう。3本を順番に並べてソムリエナイフをあてようとしたとき、ハッと気付いた。蝋のキャップシールがだんだん裸になっていく! 真ん中は上面だけにちょん。nakedは紙のふんどし!? 洒落た着こなしに飲む前から気持ちが高まる。

 飲む順番はありのままの裸から、服を着させる感じですすめた。

 もやもやとした不思議な香りの後に、すっきりした酸味とやさしい喉越しは、毛蟹の酢の物、ウニとそら豆など、不思議と日本の食べ物に合う。素顔のシャルドネは、素材に過度の味付けを加えない魚介と足並みが揃った。これには私も感激。樽を使った2本目のLIBになると、ちょっと脂ののったあんこうの肝や、大徳寺納豆を散らしたホタテのソテーとののりが良くなった。そのかわりイカそうめんは難しい。

 最後は従来通りの樽使いのシャルドネ。みなさん、それまでの2本が今までにないタイプだったため、ホッとするかなと思いきや、やや閉じていたせいか、何かつまらなさ、を感じているよう。亜硫酸(SO2)を加えないLIBは、まとわりつくようなまったり感が、好き嫌いの分かれるところなのに、人気は圧倒的に2本目のLIB。インパクトのせい? 今度はもっと時間をかけて飲んでみたいな。八ヶ岳の美しい風景に溶け込んだシャルドネ畑を思い出しながら!

 ところで参加者の一人が、ボトル裏の言葉を見て「これってビートルズの影響かしら?」と呟いた。

 ‘ワインの飲み方で世界がかわる。’

 そうか、そういえば‘Let it be’って曲あったっけ。nakedも関連ワード!

 タイムリーなことに、会の直後「ヴィノテーク4月号」の岡本さんへのインタビュー記事を偶然読んだ。以下抜粋…。
 
「以前は海外のワイン産地を訪ね歩いたものでしたが、今は全く興味がない。自分の畑のことは自分の畑でしか学べませんから。」

「…ワインのスタイルは人間が決めるものじゃなくて土地が決めるものだと分ったんです。」

「(悪いものをゼロにするのは簡単)…例えば算数で0点取るのは簡単だけど、17点取れと言われたら難しいでしょ。大切なのは、葡萄に合わせて17点にするのか、23点にするのかを考えること。」

 Let it be〜ありのままに〜。畑で自分と向き合い考えた意味深い言葉に、あらためてボトルの中身にこめられたメッセージを味わいたいと思った。
BEAU PAYSAGEとは美しい風景の意味。
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